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2006年3月30日

惻隠の情。

藤原正彦著『国家の品格』を読みました。数学者である著者の講演記録を基に書かれたものということで、タイトルの固さに反し、非常に読み易い内容になっています。

概要は、下記<著者からの内容紹介>を引用します。

『日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。「論理」と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的日本論。 』

このような、一種のナショナリズムともとれるような内容は、好き嫌い、賛否両論あると思いますが、本書を読んで思ったこと、それは、”やはり私は紛れも無く日本人なんだ”ということです。

中でも特に、武士道で言うところの”惻隠の情”という言葉が印象に残りました。

『自由』や『平等』という言葉は、一見甘美で、人々の理想とするところのもののように響きますが、実際の社会に自由も平等も有り得ない。世の中には法律があり、倫理があり、組織や規則があって、貧富の差、能力の差といった格差は歴然。そういう社会だからこそ、”惻隠の情”が必要だと、著者は説いています。

”惻隠の情”とはすなわち、弱者、敗者、無常のものへの、いたわりの心、思いやりの心、あわれみの情で、広義の道徳観です。

で、日本人には、こうした”武士道の精神”が、戦前頃まではしっかり人々に根付いていた。それが、合理主義の名のもと、急速に失われつつある今、なんとかそれを取り戻さなければ、と言っているわけです。

全編に渡り、賛同できるかどうかは別として、私自身、この”惻隠の情”が、日本人としての誇るべき精神性の一つだと言うことには同感です。

例えば、先日のWBCの王監督(国籍は中国ですが)然り、トリノでの荒川静香選手然り、両名とも、勝った事への喜びの中に、負けた者へのいたわりの心が、無意識のうちに溢れて出ていたのを、見ている人は皆、画面を通して自然と感じ取ったのではないでしょうか。

こうした精神性は、おそらく、世界の中でも、他に見られ難いものだと思いますし、だからこそ、大切にし、そして誇りに感じて行きたいものだと思います。

本書を通して、自分が日本人であることの軸のようなものを確認する、という意味ではなかなかおもしろい一冊だと思います。

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受信: 2006年3月30日 22:54

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