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2006年6月16日

山野井泰史、という人。

先日『情熱大陸』、という番組で、日本最強のクライマーとも言われている”山野井泰史”を取り上げていた。

残念ながら、最後の15分ほどしか見られなかったのだが、チャンネルを合わせた途端、思わず釘付けになってしまった。その短い時間の中で写し出された山野井は、ともかくも、ともかくも物凄い人だった。

山野井のクライミング歴が、どの位のものなのか、詳しいことは知らないけれど、4年前、ヒマラヤの高峰で雪崩に遭い、北壁単独登頂に成功するも、凍傷で手足の指10本を失ったという。そして、その後、地道なリハビリを経て、今年再びクライミングを本格始動するという。

その準備のトレーニングとして、岩壁に取り付いている山野井の指は、左右とも、中指と人差し指と、そして親指だけ。つまりは、両手3本ずつの指で、岩を登っていくのだ。

当たり前のことではあるが、5本の指で掴んでいたようには、岩を掴むことはできない。

それがどうにも悔しいといって、できない自分を歯がゆいといって、山野井は叫び、そして地団太を踏む。

なんていうか・・・・凄まじい。

登りたい、と思う気持ちと、登りたい、と思わせる対象。山野井の頭には、山野井の人生には、おそらくそれしかないんだろうな。

好きだからとか、楽しいからとか、そういう意識的な感情だけでなく、遠い彼方の昔から、刻み込まれた遺伝子の、揺るぐことのない記憶。そのようなものが、山野井を岩に取り付かせているとしか思えなかった。

生きる、ってことの一番シンプルな形は、突き詰めるとそういうものなのかもしれない。

誰にも、そういう遺伝子の記憶に司られる部分っていうのは少なからずあって、だけど、生きていくうちに、だんだんそれがわからなくなって、あるいは気づく前に、毎日の暮らしの中に埋もれていってしまうのかもしれない。

でも、何かの機会に、ふとそれがまた呼び起こされて、そして、”あぁ、自分には、こんな気持ちも眠っていたんだ”、と気づくことも、あるのかもしれない。

山野井は、今年の秋、再び、ヒマラヤに挑むという。41歳。奥多摩在住。奥さんもクライマー。是非とも、またこのドキュメンタリーの続きを見たいと思う。

『情熱大陸』殿、何卒よろしくお願いします♪

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