「海中2万7000時間の旅」
私は、海も山もどちらも好きです。でも、どちらが怖いか、というと、それは”海”です。
加えて、泳ぎがそれほど得意ではないこともあり、おそらく今後も、スキューバダイビングに挑戦するということは、まずないと思いますが、海の中の世界、海の中の生態系には興味があり、それをこの目で見てみたい、という欲求はあります。
ということで、今日は、以前から気になっていた、恵比寿の写真美術館に、中村征夫「海中2万7000時間の旅」を観に行って来ました。
中村征夫さんは、日本を代表する水中写真家の一人で、そのキャリアは40年。これまで海に潜った時間の長さが、2万7000時間(1125日)ということから、このタイトルがつけられたそうです。
会期が9月18日まで、ということもあってか、平日の昼にも拘わらず、たくさんの方が訪れていました。
展示作品は、大きく、カラーの部とモノクロの部に分かれていて、最初はカラー写真から見て行く順路になっていました。
正直なところ、このカラー写真の展示を見始めたときには、想像とはちょっと違うな、という印象を受けました。
私の中では、もっともっと迫力のある、もっともっと神秘的な写真を期待してたんですが、実際目にすると、やはり、広大な海中の一部、一瞬を、無理やり切り取ってしまった、というような、やや卑近な匂いの濃い写真のように感じました。(もちろん、その撮影が、命がけの素晴らしいものであるということは大前提で。)
で、なんとなく物足りない気分で、会場を回っていたのですが、カラーの部を終え、モノクロの部に立ち入った瞬間、思わず”これだ~!!!”と心の中で叫んでしまいました。
うーん、どう表現したらいいんでしょう。
とても不思議なのですが、モノクロなのに、カラー写真より、ずっとずっと臨場感に溢れていて、ずっとずっと迫力があって、ずっとずっと躍動感があるように思いました。
海の中がどんなに静かで、どんなに緊張感があって、どんなに穏やかで・・・・そういうことが、音や光や水圧として、ありありと実感できるような、そんな気がしました。
おそらく、”海中”という、とてつもない大自然の色彩を、そのまま再現することは不可能に近いものであって、その場合”色”という情報は、見るものに、返って余計なイメージを与えてしまうからなのかもしれません。
だからこそ、モノクロという、”光と影”だけの世界の方が、よりリアルに、より静謐に、より鋭敏に、見るものの感覚に訴えるのかもしれません。
ザトウクジラの実物大のモノクロ写真が、壁面一杯に展示されていましたが、それは物凄い迫力で、こんなのが、海中で、突然目の前に現れたら、それこそ、もう、我を忘れて虜になってしまうかもしれない、と思いました。
ということで、今日は一日、モノクロの海中をさまよいながら、お魚になったワ・タ・シ♪なのでありました。
ま、なれるとしたら、さしずめ、ヒラメか、カサゴか、フサギンポ・・・あたりかいな。
*写真は、絵葉書(自宅撮影)と、フサギンポ(^m^)(電子図鑑より)。
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