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2006年11月15日

『白狐 (The White Fox)』

遠慮めさるな浮世の影を花と夢みし人もある 岡倉天心

先日、とある新聞のコラムで、岡倉天心のことが、大きく取り上げられていました。

岡倉天心(本名覚三)と言えば、明治期、日本の美術界に大きな影響を及ぼすとともに、古美術保護に多くの功績を残した人物の一人ですが、その天心が、晩年、病を押して、英文で書き上げたと言われる、オペラ台本『白狐』。

信太妻(しのだづま)の伝説を底本として天心が創作したもので、

「安倍野の領主保名に命を助けられた白い狐が、人間の女性に姿をかえて、保名と幸福に暮らし子供もできるが、やがて狐に戻らなければならなくなり、泣く泣く森に帰る」

という悲しい愛の物語なのだそうです。

その、天心の作品 『白狐』 を思わせる、名画を残したのが、天心の弟子とも言われている、日本画家 の”下村観山”。

画 「白狐」、私は、件のコラムの中に掲載されていたカラー写真を見ただけなのですが、これが本当に、なんとも言えず美しく、描かれた狐の後ろ姿を眺めていると、思わず、その世界にひきこまれてしまいそうな、素晴らしい2曲1双なのです。

で、是非とも、実物を見てたいな~・・・、と思って調べてみましたところ、『東京国立博物館』 が所蔵していて、偶然にも、偶然にも!今月19日まで(10月11日~)一般展示されているらしいのです!!!

ううぅ~、見に行きたいな~~、行きたいな~~(><)!!

が・・、しかーし、今週はあれこれと雑用があって、ちょっと難しいかな~・・。あぁ~、でも、なんとか見に行けたらいいな~・・・。

・・・話は天心に戻りますが、オペラ 『白狐』。

なんでも、この作品には、それまでに、天心に拘わった3人の麗しき女性、”ボストン社交界のクイーン、イザベラ・スチュワート・ガードナー” ”文部省時代の上司九鬼隆一の夫人初子” そして ”インドベンガル地方の詩人プリヤバンダ”の、悲運のイメージが、色濃く織り込まれているのだそうです。

うむむ~、こちらもとっても気になりますね~。

どんな分野にあっても、心震わす作品とは、やはり、悲運・悲恋のもたらす場合が多いものなのでありましょうか。

天心が、自らの死を悟ったとき、プリヤバンダに送った手紙に付された詩、「戒告」。

私が死んだら
悲しみの鐘を鳴らすな、旗をたてるな

人里遠い岸辺、つもる松葉の下ふかく
ひっそりと埋めてくれ、

あのひとの詩を私の胸に置いて私の挽歌は鴎らにうたわせよ

もし碑をたてねばならぬとなら
いささかの水仙と、たぐいまれな芳香を放つ一本の梅を
さいわいにして、はるか遠い日、海もほのかに白む一夜

甘美な月の光をふむ
あのひとの足音の聞こえることもあるだろう

*1913年 原文は英語、岡倉天心全集第7巻(平凡社刊、翻訳:大岡信)より

ちょっと悲しい(・・、)

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