森の『いろいろ事情がありまして』
愛読書の一つであるこの本のプロローグには
”木がたくさん生えている眺めが「森」なのではなく、無数の生き物のかかわりあいこそが「森」なのです”
・・・こんな一節が記されています。
軽井沢を拠点に、野生動植物の調査研究を行う専門グループ ”ピッキオ”。
その”ピッキオ”が中心となって、無数の生物が複雑に絡み合う、森の四季折々の生態を、【野草】や【鳥】や、【蛙】や【昆虫】、それぞれの個性・能力・経歴にスポットを当て、それぞれの立場に立って書かれた(?)、とても楽しい一冊です。
私は、この本で、初めて、カラマツに花が咲くことを知りました。
アリには、300近い種類がいて、軽井沢の森だけでも、30種類が生息していることを知りました。
私の苗字と親戚のような ”シシウド”。
この”シシウド”は、多年草でありながら、あの花火にも似た”花の塊(花序)”を咲かすのは、人生最後の一回だけ。
その一回で、子孫を残すため、長い月日をかけて作り上げられた受粉の仕組みには、感動すら覚えます。
そんな、多種多様な”森の事情”が、写真とともに、興味深く紹介されていますが、中でも最も心惹かれたもの。
それは ”タネ”の世界です。
自分で移動できない植物にとって、タネは大切な子孫。
風に飛ばされやすいように、動物の毛にくっついて運ばれやすいように、動物に食べられ、糞となって移動しやすいように・・・・。
あの手この手で ”かわいいタネには旅をさせよ” とこらされた巧妙な工夫。
そうした工夫が、タネそれぞれの個性となって、中には、ボタンやビーズのように美しいものもあり、チョウセンゴミシの種子など、その色といい形といい、タネにしておくのはもったいないくらいです。
こんな小さなタネ一つを取ってみても、その後ろ側には、生命の連鎖に果たす、大切な役割がちゃんとある。
知られざるいくつもの営みが複雑に絡み合うことで、”森”は動いているのですね。
この本からは、一年単位の四季にはおさまらない、何十年・何百年という、大きな時の流れの中に生き続けるダイナミックな森の姿を、繊細かつユニークな視点から、伺い知ることができます。
信濃毎日新聞社から1600円。
機会がありましたら是非!
ところで。
どうして急にこの本を紹介したくなったか、といいますと・・。
それは、先日、Cとせさんのブログで とても素敵な”タネ”の話を読んだからなのです。
そして、そのCとせさんも、なんでも他の方の日記を読んでそのテーマを書かれたのだとか。
そうして考えると、これも、立派な連鎖の一つ。
誰かの言葉に、気づかされたり、励まされたり。
私たち人間だって、ささやかだけれど意味のある、いくつもの糸が繋がってこそ、生きていかれるものなのですよね。
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