2012年1月26日

長火鉢でトースト。

山田洋次監督が選んだ日本の名作100本 家族編

という番組、昨年4月から NHK BSプレミアで放送されています。

私は、日本の古い映画が大好きです(^-^)!(夫が、古い洋画好きなので、洋画も観ますが)。

とりわけ、1950年代、60年代の作品をよく観ます。

本当は、もっと古い映画も見たいけれど、なかなかレンタルでは出てこないし、機会に恵まれない、というのが実際です。

そんな私にとって、この番組は、まさに至福。

めぼしいものをチェックしては録画し、まとまった時間の取れるときに観ています。

・・・で。

最近見た一本、『兄とその妹』(1939年 島津保次郎)の中に、この”長火鉢でトースト”を焼く、というシーンが出てくるのですが、それがと~っても素敵で!

そして本当に美味しそうなのです!!

長火鉢。

断然欲しくなってしまいました!

1939年の家庭にあって、トーストにバター、というのは、とてもハイカラだったと思うけれど、それを、座卓で、長火鉢で焼いて食べる!

そうした時代の風景に触れられるとことが、映画の醍醐味の一つなのですよね。

”洋風の暖炉”にも憧れますが、いつか自分の家を持った日には、長火鉢、是非欲しいな~。

余談ではありますが、私がとりわけ好きな監督は、成瀬巳喜男、川島雄三、溝口健二です。

そして好きな女優は・・・

たくさんい過ぎて、選ぶのは難しい~けれど、今は、やっぱり新珠三千代かな~♪

風船』(川島雄三)に出てくる、愛人役の新珠さんは、もう本当に本当に、惚れてまうやろ~ってくらいに美しい(※洋服の着こなしにも超うっとり)。

なのに、『江分利満氏の優雅な生活』に出てくる、奥さん役の新珠さんときたら、能天気で、かわいらしい女性そのもの。

本当、あの時代の女優さんは、すごいな~と、つくづく思います。

現代も、映像の世界にべっぴんさんはたくさんいるけれど、私にとって憧れの対象、となると、やっぱり往年の女優さんと言えましょう。

・・ということで。Photo

持ってます、この本(-->)。

愛読書・・・の一つです。

むほほ(*^o^*)

芦川いづみさんなんて、今の時代でも十分アイドルになれそうなくらいかわいいよ♪

きゃは!

・・・・・・

すす、すみません。

このあたりの話になると、つい興奮してしまいます(汗)。

日本人の戦前・戦後、そして今に至るまで、映画を通じて、その暮らしや文化を垣間見ることは、私にとって、これからも、かけがえのない時間の一つとなりそうです(^-^)♪

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2009年12月21日

まとめてDVD♪

何も予定のない週末、自宅で映画を観るのが好き。

お菓子とコーヒーで、映画を観るのが好き。

時々襲う、睡魔と戦いながら、映画を観るのが好き。

・・しかしながら。

観た端から、どんどんと薄れて行く、記憶と余韻(汗)。

ならばせめて、何を観たかだけでも、どこかにメモしておかなくちゃ!

と言うことで、2009年もあとわずかとなった今。

奮起して?、夏以降、鑑賞した中から、面白かった順に、主だったものをいくつかご紹介いたします(あらすじ等は書ききれないので、Yahoo映画及び公式サイトでリンク)(★5つを最高として、独断評価)

かげろう』(2003年製作 フランス 監督:アンドレテシネ)★★★★

1940年、戦時下、未亡人と謎の青年の、繊細かつむき出しな人間模様。生きることの残酷さ、儚さ、したたかさ。主演 エマニュエル・ベアール とギャスパー・ウリエルがとてもとても美しい。R15指定らしいが、そういう映画じゃないような~、そうとも言い切れないような・・。

画家と庭師とカンパーニュ』(2007年 フランス 監督:ジャンベッケル)★★★☆

中年期を迎えた、幼なじみの二人の男性。その人生のコントラスト。底辺に流れる、強さ、静けさ、暖かさ。ヤングな世代?にはなかなか理解できない人生の機微。とても素晴らしい映画です。

クリクリのいた夏』(1999年 フランス 監督:ジャンベッケル)★★★☆

クリクリが、少女時代を回想する設定。生きることの喜び、豊かさはどこにあるのか。ストーリー自体は、何の変哲も無い、人生の一ページに過ぎない。しかしながら、ジャンベッケルの手にかかることで、生き生きと動き出す。

題名のない子守唄』(2006年 イタリア 監督:ジュゼッペトルナーレ)★★★☆

ニューシネマパラダイスの監督、ということで観ましたが、こりゃ~、女性にはきっついテーマです。最後まで見ることで、救われます。

ラースとその彼女』(2007年 アメリカ 監督:クレイグ・ギレスピー )★★★

この手の、不思議な世界が実は好き。人間なんて、みんなどこかしら歪んだり、曲がったり、何が本当かなんてことは、突き詰めたらわからないのが人生。主役のラース(ライアンゴズリング)が、知り合いに似ていて、それが気になって仕方なかったです(笑)。

マルタの優しい刺繍』(2006年 スイス 監督:ベティナ・オベルリ)★★★

閉塞感漂う、小さな村での出来事。でも、観終わったとき、なんともいえない爽快感に包まれる。人生、いくつになっても、その気になれば、風を起こせる!

なごり雪』(2002年 日本 監督:大林宣彦)★★★

臼杵三部作(今はまだ2作品みたいですが)のひとつ。雪子の”違う、違う”というセリフが耳から離れない。『22才の別れ』よりはおもしろかった。臼杵駅という設定で使われている駅は、本当は上臼杵の駅。大分Kimiさんから、とてもいい駅だよ、と教えてもらっていたので、先日の旅行のとき、ばっちり見てきました(^-^)

ホルテンさんのはじめての冒険』★★☆(2007 ノルウェー 監督:ベント・ハーメル)

冒険・・というにはどうなんだろう。定年を迎えたホルテンさんの新たな人生。小さな歯車が一つ狂ったことから次々と起こる事件(?)。誰かが書いていたけれど、同じ北欧ということで、カウリスマキの映画を彷彿させる・・・。けれどやっぱり全然違うかな?

昼顔』(1967 フランス 監督:ルイスブニュエル)★★☆

ともあれ、カトリーヌドヌーブが美しい~。

うーむ!

うむむ~!!

こうして書き出してみると、私の映画の趣味趣向が、いかに偏っているか!ということがよ~くわかります。

アクションもの、SFもの、ホラー等々。

ほとんど観ませんです。

ここに書き出したもの以外でも、面白いのがあったような気がするけれど、既に忘れてしまっているような・・・(汗)。

ひどくつまらなかったYO・・・、というものの方が、かえってよく覚えていたりして(ここにはちょっと書けないけれど)。

映画がらみと言えば、つい最近、『シネマの名匠と旅する駅』という本を買ったので、年末にはこれを読むのを楽しみにしています。

せっかくだからこの際、極めて狭い、Myシネマ嗜好を脱するためにも、みなさんのおすすめ映画があったら、是非とも教え欲しい~・・・!

・・・と思いつつ、次に観ようと借りてきているのは、高峰秀子主演の『二十四の瞳』

・・・なんですけれどね(滝汗)。

<バリバリヒューマンもの。原点?・・・ですがな(--;)>

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2009年7月31日

7月のDVD。

ここのところ、暑さと興奮(?)で、寝不足が続いていましたが(なんだかんだと思い巡らすことの多いお年頃なもので・・)、今朝は、久しぶりにすっきりとした目覚めです。

随分涼しかったですものね。

今月も、ぽつぽつと、DVDを鑑賞しましたので、その中から、3点ご紹介。

☆『東南角部屋二階の女Photo_7

ストーリーは、西島秀俊演じる”野上”を中心に、父の残した借金、祖父の所有する古いアパート、そうしたものを巡って、まつわる人々の現在・過去が交錯しながら、生きることに迷い悩む、若い彼らの心に何かしらの種を落とす・・・・

出ている役者が、皆、とても自然に物語に溶け込んでいて、のんびりと、お休みの午後などに似合いそうな、ほっとできる作品です。

中でも、小料理屋のおかみ、藤子役の香川京子がとてもよかった。実に気品溢れる美しさに満ちていました。

私はやっぱり、洋画も邦画も、燻し銀の女優さんが好きだな~・・と改めて認識。(・・・と言いつつ、涼子役の竹花梓も、とても可愛かったです。)

☆『On Golden pond』(邦題 『黄昏』)Photo_5

とにかく、映像と音楽が美しい。それだけで十分価値がある!と思わせる作品。

物語は、キャサリン・ヘプバーンとヘンリー・フォンダ演じる老年夫婦が、老いる事の寂しさ、恐怖、そうしたものに直面することで、自らの心の内側と向き合い、やがて家族が、自立した人間同士として、今一度その絆を取り戻して行く・・・

父娘の長年の確執・・というのが、伏線としてこの映画を引っ張って行きますが、その娘役にジェーン・フォンダ。

実の親子の共演は、なんとなく胸に迫るものが。

キャサリン・ヘプバーンは、『旅情』を観て以来好きになりましたが、往年のこの作品にも、格別な味わいがありました。

☆『君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956Photo_6

”万人受けはしないだろうが、とても上質な一本”

・・と、誰かが書いていました。

まさにその通りの作品だと思います。

ソ連の統治に、自由と解放を求めて武装蜂起したハンガリー動乱。

オリンピック史に残る実在の水球チームが、宿敵・ソ連との決勝戦を制すまでのエピソード、その水球のトップ選手のカルチと、学生運動を主導するヴィキとの心模様を絡めながら、歴史的史実に側した一連を映像化した作品。

ハンガリー革命が、どんなものだったのかを知る上でも、とても素晴らしい作品だと思います。

ラストのシーン、カルチとヴィキ。

互いに、祖国を愛し、家族を愛し、貫くものを貫いたが故の、それぞれの運命。

極めて冷静に、ハンガリーの背負ってきた歴史を描き出している作品だと思います。

関連して、我が家のことを少々・・。

15年ほど前のことですが、宮本輝の『ドナウの旅人』という小説を読んだことがきっかけで、東欧に興味を持ち、安チケットで、リュックを背負い、オーストリア、ハンガリーと訪れたことがあります。

そのときは、もちろん既に民主化され、ブダペストも観光地化された街にはなっていましたが、それでもやはり、訪れる場所、そこかしこに、抑圧の影を肌で感じた記憶が。

・・そして・・・

事件は勃発!

忘れられない、あり得ない、驚愕の(夫の)パスポート紛失事件が~!!

到底ここには書ききれない、嘘のようなホントの話。

いずれ機会がありましたら、焼酎でも飲みながら、臨場感たっぷり、お話したいです。

スリル満点だよ~。

みなさま、どうぞ素敵な週末を~♪

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2009年6月20日

6月の邦画。

今月に入って、邦画DVDを4本観ました。

少々ココロのゆとりが出来たということでしょうか。

期待はずれ、期待通り、期待以上・・・、さまざまありますが、今回の期待以上は、一本だけ。

百万円と苦虫女

いわゆる若者向けの青春物かしら・・と思いつつも、出ている役者が好きだったので、借りてみましたところ、これがなんと、意外にも面白かった!

この手の映画にありがちな、”いかにも”、という押し付けがましさも感じられず、地に足の着いた現実味も適度にあって、中盤から後半にかけては、ぐんと引き込まれて行きました(前半は少々強引)。

社会からはみだした、ちょっと変わった女の子。

その主人公の、悪戦苦闘成長物語?

いやいやそうとも言い切れず、単なる青春物とも言い切れない。

登場人物一人一人の心情がとても丁寧に描き出され、ストーリーの展開にも、エピソードにも、無駄なものがないなぁ、という印象でした。

主演の蒼井優がとてもいい。

えもいわれぬ凄みがあって、はまり役と思われます。

以前観た『人のセックスを笑うな』でも、主演の永作博美を食うくらいの存在感があった・・・と記憶しています。

私は、つまらないと、大抵、早送りでどんどん飛ばしてしまうのですが(汗)、この映画は、そういう部分もなく、最後まで気持ちの途切れることなく観ることができました。

ラストのシーン。

ここをどう捉えるか。

おそらく世代によって分かれるところでしょう!

もやもや~っとした、じれったいものが残るとしたら、それはきっと若さの証拠。

”人生全てなるようになる。なるようにしかならないのがまた人生。”

そう感じたアナタとワタシは、やっぱりオトナ(笑)。

機会がありましたら、是非!

ちなみに、その他の3本は、

グーグーだって猫である
東京ソナタ
ジャージの二人

いずれも気づけば、なんとな~く・・だらだら~っと観てしまったという感じです。

面白いか面白くないか。

映画でも歌でも絵画でも、表現されたものに、興味が持てるか持てないか。

それはもうひとえに、”個人の好み” に尽きる世界。

それは紛れも無い事実。

・・・ではありますが、やはり分かれ目となるのは、描きたい!という作者の情熱。

突き動かされる想いがあるかどうか・・。

映画に限らず、表現されるものはおしなべて、描きたいことが何なのか、少なくとも、まずはそれが作者の側ではっきりしていないと、観ている人はついていけない・・・

・・と、そんなことを改めて感じました。

さて!

休日は、なぜかいつも以上に早起きの我が家ですが、今日は終日夫にフラれてしまったので・・・

仕方がない。

こことは一つ、家の片付けにでも勤しみましょうか~・・

・・って☆\(-_-;)。

せっかくのお休みにそれもなんなので、買い物がてら、ふらりと街に繰り出してみようと思います♪

・・まぁ、電車で7分、いつも行ってるとこだけど(汗)。

どうぞみなさま良い週末を~(^-^)♪

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2008年10月 6日

ぶどうの季節。

週末、遅まきながら、この秋初物のぶどうを食べました。

最近は、種類が本当に豊富になり、食べやすさに重点を置いているのか、どれも粒が大きくなっているようですね。

昔ながらのデラウェアは、隅の方にちょっとだけ、なんてお店も少なくありません。

ぶどうというと、思い出すのは、映画『稲妻』のワンシーン。

主演の”高峰秀子”は、目下私の最も旬なアイドルで(^-^;)、時間をみつけては、少しずつ往年の作品を観ていますが、中でもこの『稲妻(成瀬巳喜男監督)』は、とても好きです。

林芙美子原作小説の映画化で、女性の自立を描いた作品なのですが、高峰さん演ずるバスガイド役の清子が、なんとも小気味良くすがすがしく、そのたくましさと美しさに、思わず惚れてしまいそうです。

浦辺粂子演ずる母親と、父の異なる3人の兄姉。

複雑な家庭環境、身内の醜態に嫌気が差し、やがて一人下宿を借りて家を出る末娘、というストーリーなのですが、ある日、母と、自分の今後について庭で話をする場面で、清子がぶどうを食べる。

そのシーンがとてもかっこいいのです。

一粒ずつ口に入れては、”酸っぱいっ!”と顔をしかめながら、皮と種を手のひらにプップッと吐き出し、それをひとつずつポーンと庭に向かって放り投げる・・・。

たったそれだけのなんでもない仕草なのですが、これが実に粋でテンポがよく、清子の人間性を上手に描いたワンシーンのように、私には感じられました。

自立を始めた下宿。Photo

その隣に住む、国宗周三(根上淳)とその妹つぼみ(香川京子)。

この二人との交流で、清子の心はだんだんと安らいでいくのですが、この兄妹が、これまたとてつもなく美しい~!

両親を亡くしながらも、清くつつましく支え合う兄と妹。

ピアニスト志望の妹のため、練習時間を惜しんで、家事一切を自ら進んで引き受ける兄。

あまりの美しさに、つっこみどころがみつからない~!

高峰さんは、現在84歳。

映画監督・脚本家のご主人松山善三氏と二人暮らしのご健在。

50歳で現役を引退して以来、ほとんどマスコミには姿を現さない高峰さんですが、素晴らしいエッセイもたくさん書いており、その波乱万丈な人生は、とても興味深いものがあります。

ちなみに、フルムーンのCMで、上原謙氏と共演し、ナイスバディーで話題を呼んだのは高峰三枝子さん。

名前は似ているものの、個性は随分異なる二人ですね。

私も最初、”稲妻”の高峰さんと、”湯船に浸かった”高峰さんが、どうしても繋がらなくて混乱しましたが(汗)、別人と分かってほっとしました。

このほか『乱れる』という作品の高峰秀子さんもとても素晴らしく、銀山温泉を舞台にしたラストシーンは衝撃的です。

お時間ありましたら、是非、ぶどうを片手にご覧になってくださいね。

また一週間、元気に過ごしましょう~!

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2008年6月10日

『心中天網島』

1969年 篠田正浩監督。

これは、どえらい作品です。

そもそも、武満徹氏が音楽をつけている、ということに興味を持ち、手にした映画だったのですが、思いがけず凄いもので出会ってしまった・・・。

原作は、近松門左衛門の浄瑠璃で知られる物語ですが、これを、モノクロの、虚構とリアリズムの狭間を行き来する、独特の世界観で表現しようと試みているのがこの映画。

”これは一体なんなのだ?!”と、呆気に取られているうちに、気づくと最後まで引き込まれている・・・。

そんな感じです。

冒頭、篠田監督と、脚本の富岡多恵子との電話のやりとりで始まり、そのバックに、浄瑠璃の人形や、人形使いたちが象徴的に切り取られて映し出されて行く場面から、一転、義太夫の『心中天網島~』という語りの声で、本編へと繋がれていく。

本編も、人間と小道具以外は、敢えて、仮のセットで設えてあり、要所要所に、なぜか黒子が現れては、物語の節目を仕切って行く。

なんとも不思議な作り込みだけれど、その虚構性が、返って、物語の生々しさを際立てているようで、本当、凄みのある作品だと思いました。

主演の岩下志麻は、一人二役(遊女小春と、その恋仲にある紙屋治兵衛の本妻役)で、その役柄の演じわけがまたすばらしい(演技そのものは~・・・ちょっと若いか?)。

肝心の音楽は、というと、これが意外な展開・・・であるけれど、怖いくらいに嵌っている。

武満氏自身が、

『男と女が恋のために死ぬ、というエロスの一番の原点に行くと、平均律で調律された近代西洋音楽は絶対に、はねつけてしまう』

『江戸時代には、原始的で、芸術的な人間のスピリットはやバトスがある一方で、ものすごく洗練された町人文化もあった』

『現代映画から見たら、ある意味で古代と現代が全く矛盾なく存在している。映画のラッシュを見て、すぐそう思った』(『武満徹を語る15の証言』より)

と語っている通り、使われている音楽は、ガムラン、琵琶、アフリカの民族楽器や、トルコの笛、太鼓・・。

実は、武満氏自身が作曲したものは一つも無くて、全て、市販の民族音楽のレコードなどをサンプリングして用いたのだとか。

確かに、全体を通して見た時、音楽の入っている部分は、決して多くはないのだけれど、その象徴的な音色と場面がリンクして、妙な余韻に引きずられていく感じ。

音楽以外にも、美術が重要な役割を担っていて、浮世絵や仮名文字を大胆に用いた、町並みや、紙屋の内部をデフォルメしたセットの映像が圧巻。

最後まで目に焼きついて離れなくなってしまいます。

近松の原作を最も意識した作品、と評され、後に、人形浄瑠璃や歌舞伎にも、少なからずの影響を与えた、古典復活の契機とも位置づけられている、ある種実験的映画。

その当時、ほとんど予算の無い中で、そうそうたるメンバーが結集し、苦心して生み出した作品だけに、今見ても、その迫力と斬新さが際立つ、一見の価値ある芸術と言えるのではないでしょうか・・・。

昭和44年、封切時は、《十八歳未満お断り》映画に指定されていたそうですが、そんなこんなの場面も含めて(?!)、興味のある方もない方も?、機会がありましたら、初夏の一夜に、是非ご覧下さいませ~。

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2008年5月16日

『私のちいさなピアニスト』

Photo

昨年夏に公開され、本当は劇場に見に行きたかった一本。

先日DVDで見ましたが、純粋に、いい映画でした。

”音楽を愛する全ての人に贈る”

そのキャッチフレーズにある通り、ピアノが好きであっても好きでなくても、誰もがきっとどこかで出会ったことがあるだろう、シンプルかつストレートな人間ドラマに、自然と引き込まれていく108分です。

この映画の凄いところは、なんと言っても、出演者が皆、ハッタリなしに、真っ向ピアノを弾くところ。

そしてこれがまた素晴らしいのです。

近所の悪ガキ・キョンミン役のシン・ウィジェは、7歳でピアノを始め、その7ヶ月目には、コンクールで一位を獲得した、実在の天才ピアニスト。

そして、その成人役として、ラストにラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』を本物の舞台で演奏した、これまた注目の韓国出身ピアニスト、ジュリアス=ジョンウォン・キム 

そりゃ~、圧巻でありました。

演奏そのものの素晴らしさは言わずもがな、そこに至るまでのストーリーが、見るものの心に背景としてあるから、余計に感情が入ってしまう。

ワタクシなど、口をあんぐり開いたまま、その迫力に放心してしまいました。

そして思ったこと。

音楽とは、紛れも無く、”人間の感情表現”そのものだということ。

おそらく、あのピアノ協奏曲も、一般のコンサートとして聴いたのと、この映画のラストとして聴いたのでは、やっぱり思い入れが違ってくるのでしょう。

音楽というものは、それだけ”底知れぬ共振・共鳴の力”を秘めている、ということですね。

そして天賦の才・・。

確かに与えられるものなのでしょう・・・・。

そんな シン・ウィジェの演奏は、こちらで聴けます。

なんと言いますか、これを見てしまうと、わが身を振り返り、心にぽっかり空しい気持ちが広がりますが、唯一の救いは、

インタビュアー:--どんな気持ちでピアノを演奏していますか?
シン・ウィジェ:幸せな気持ちで弾いています。』

・・・これでしょうか。

これだけは、天才も凡人も違わぬ思い・・・。

ちょっとほっとします。

”凡人の知恵と根性”を駆使して、今日も明日も、愛しき電子ピアノに向う私なのであります。

どうぞ良い週末を!

*『私のちいさなピアニスト』オフィシャルサイトはコチラ

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2008年4月21日

最近(最後まで)観たDVD。

家で、お菓子をつまみ、ゴロゴロしながら見る映画。

そんな時間はたまらなく好きです。

好きですが、あまりの心地良さに、その5割以上は、確実に睡魔に負けてしまう私。

しかも、映画の内容がおもしろいかどうか、そのことには直接関係ない・・。

あれは本当に不思議です。

そんな中、もちろん最後まで観通す場合もありまして、最近で言うならば、『めMegane_4がね』がその一つです。

監督・脚本は、少し前、静かなブームを呼んだ『かもめ食堂』と同じ荻上直子さん。 

キャストも、”もたいまさこ&小林聡美”は共通で、映画に流れるトーンや映像の美しさは、”かもめ食堂”によく似ています。

ストーリー自体は、いたってシンプルで、”人にとっての本当の自由とは?”・・・というようなテーマを、あまり凹凸のない展開の中に、淡々とちりばめている。

『かもめ食堂』を観た時も、直後は、どうってことない映画だな~・・・・と思ったのに、時間が経つにつれ、なぜだかじわじわ効いて来る・・・。

今回も、それと同じような感想を持ちました。

また、劇中、さりげなく使われている音楽。

”映画音楽”というと、どことなく”大作”というイメージがありますが、ここで使われている音楽は、むしろ”効果音”に近いもの。

控えめながら、映像としっくりマッチしていて、それも印象的でした。

こちらで試聴できます。

それと、もう一つ、完・鑑賞?した作品を挙げるとしたら、アルゼンチン映画の『ボンボン』・・・かな。

まじめだけが取り柄のような中年男性が、職を失い、運のない毎日を過ごす中、ひょんなことから出遭った白い猟犬”ボンボン”。Bonbon

この”ボンボン”がやって来た日から、身の回りに少しずつ、いいことが起こるようになる・・・。

こちらもいたってシンプルなお話ですが、この映画で、最初から最後まで、終始釘付けになったもの、それはなんといっても、主人公を演じるファン・ビジェガスです。

その ”表情”や”存在感”は、セリフの少なさに相反し、主人公の人物像を物語るに十分過ぎて、一体どういう役者なんだろうと、観ている間中、興味津々。

早速調べてみましたところ、なんとこの方、”この役柄のために抜擢された、役柄と同じ経歴を持つ 全くの素人”なのだそうです!

う~ん、それはすごい!すご過ぎる!

あのぎこちなさは、演技なのか、素のままなのか。

この映画、世間の評判は、必ずしも良いとは言えないものですが、私の中では、”最良のプロフェッショナルはまた、最高のアマチュアでもある”という言葉を思い出さずにはいられない作品となりました。

・・・ということで、こうして書いてみてわかりましたが、私が最後まで観通せる作品とは、いずれにしても”単純なもの”、ということが条件なのですね~・・(汗)。

さて。

今週乗り切ると、いよいよGWですね。

私の花粉も、ようやく8割方終わりのところまで来た感じです。

GWが明けたら、また歌いたい。

それを楽しみに、一週間元気にがんばります(^-^)ノ

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2007年9月13日

『ゆれる』

Photo_60_3

私の好きな役者が二人揃ったこの映画。

なんとしても観たいと思っていたこの映画。

ようやく先日、じっくりと鑑賞する機会を得ました。

私は、こういう映画、とても好きです。

観るものの心に、さまざまな波紋を投げかけながら、その役柄に、自然と感情移入させてしまう、人間の心の襞を丁寧に描き出した作品には、表し難き凄みのようなものが迸ります。

そして、見終わった後、なんとも説明のつかない気持が込み上げて来ます。

いずれにしても、オダギリジョーも、香川照之も、大した役者です。

人が生きていく上で直面する、いくつもの”事実”と”真実”。

この二つは、ほとんどの場合一致し得ないものなのだ、ということを、改めて考えさせられた気がします。

なぜなら。

”事実”とは、その場に横たわったまま、決して動くことも消えることもない現実。

でも”真実”は、全て人の心の内側にあって、”事実”とは、全く別のところに存在するもの。

人間て、事実を事実のまま受け止めることって、多分ほとんど有り得ないのであって、みな、自分の中に取り込むとき、少しでも理解し易いよう、少しでも辻褄の合うよう、何かを微妙に作り変えながら、それを記憶していくものなんだと思います。

そしてそれが、やがてはその人にとっての、たった一つの”真実”となって、心の底に溜まっていく。

この映画は、そうした、積み重なる”事実”と”真実”の間で、むなしく”ゆれる”心の葛藤、苦しさ、不条理のようなものを、兄弟の絆と愛憎に焦点を当てながら、冷酷かつ劇的に描き出している作品のように思います。

それにしても、あのラストシーン。

兄ちゃんは、なぜあんな風に笑うことができたのか・・・。

兄ちゃんは、一体どこに行こうとしていたのか・・・。

兄ちゃんは、果たしてあの後バスに乗ったのか、乗らなかったのか・・・・。

人の心はまさに闇。

でも、その闇にあってこそ、光もまた、何かを照らし、浮かび上がらせることができるもの。

”兄ちゃん”は”兄ちゃん”であって、”兄貴”でも、”兄さん”でもない。

それこそが、この映画を貫く、唯一の光であり、また救いだったのかもしれません。

機会があったら、是非!

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2006年10月23日

『紙屋悦子の青春』

今日は朝から気合を入れ、岩波ホールまで、映画を観にいってきました。

夏からずっと見たかった、『紙屋悦子の青春』(主演:原田知世)という作品です。

監督は、「TOMORROW/明日」「美しいキリシマ」「父と暮らせば」の、戦争三部作で知られる、故・黒木和雄監督。

雨の月曜日にも拘わらず、8月の半ばから上映しているにも拘わらず、開場前には、既に50人くらいの人が並んでおり、じっくりじわじわ、その評判が浸透している、息の長い映画であることを、肌で感じて参りました。

”紙屋悦子”とは、劇作家・松田正隆氏の実母で、氏が、”終戦間近にあった、若き日の両親のことを描いた戯曲 「紙屋悦子の青春」”が原作となっている作品です。

昭和20年の春、太平洋戦争末期の日本の家庭の日常生活。

戦時下の日本では、普通に暮らす、普通の人々が、きっとたくさんの場所で、こういう静かな悲しみ、苦しみに翻弄され、そして今も、その矛盾と傷から逃れられずにいるのだろう・・・そんなことを考えさせられる作品だったように思います。

登場人物は、鹿児島の田舎町に暮らす”紙屋悦子”と”兄夫婦”。そして、悦子が思いを寄せる、兄の後輩”明石少尉”と、同期で親友の”永与”。

”明石少尉”もまた”悦子”に思いを抱きながらも、自ら特攻隊に志願するため、出撃を間近に、最愛の”悦子”を親友”永与”に託そうと、自ら二人を引き合わせる。

その”明石”の、秘めた決意を知りながら、戦時下にあって、どうすることもできない、”悦子” ”兄夫婦” ”永与”。

それぞれの思いや心の襞を、一つ一つ、長いカットの中で、静かに描き出した、まさに《舞台》を思わせるような、そんな作品だったと思います。

戦争映画でありながら、戦闘シーンはおろか、砲撃も銃声も一つもなく、ほとんどの場面が、家の中で、ちゃぶ台や座卓をはさんで、家族や友人が、生きるために食べ、そして語り合っている。

効果音もBGMも何も無く、聴こえるのは、”家の中を歩く足音や、湯を注いだり、戸棚を開けたり、手紙を書くときのペンの滑る音”。

そうしたなんでもない”日常の生活音”と、”登場人物のセリフや間合い”を通して、それぞれの感情の流れを、誠、繊細に伝えているため、自然とひきこまれてしまう場面がいくつもありました。

特に劇的なストーリー展開や、激しく心揺さぶられるシーンはないのですが、”ただ静かに、日々の暮らしに最善を尽くしながら、誰かのことを大切に思って生きて行きたい”、そんな優しい日本人の心が、とても自然に描かれているように思いました。

そして、人には、”本当に大切だからこそ、本当に相手を思うからこそ”、決して言葉にはできない心があるんだ、ということを、改めて強く感じる、そんな1時間52分であったように思います。

ふぅぅ~。

私、いつも映画館で映画を見る時って、どんなに泣きたくてなっても、泣いた後の、あのなーんとも言えない所在なさ、いたたまれない感じが恥ずかしくて、大抵根性で堪えるんですが^0^;、今日は、あまりにも胸がぐわーんと詰まってしまって、これ以上我慢すると”窒息するかもっ(◎o◎)!”と思い、覚悟を決めて泣きました。

というわけで、今週は、映画鑑賞の月曜日から始まりましたが、また一週間、元気に過ごしたいと思います(^-^)♪

☆『紙屋悦子の青春』 http://www.pal-ep.com/kamietsu/index.html

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